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チャクラと七つの身体−32

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◎肉体−15 ひきこもり列島

○非社会的生活での思考力・集中力の低下

第二次世界大戦が終わって間もない時期に、アメリカのプリンストン大学で、約100人の大学生を3日間位、防音装置の施された真っ暗な部屋に閉じ込めた。部屋は1.3m×3mで、中には大型ベッドとトイレがあって、食事はアイスボックスに入れてある。

部屋の中には、いわゆるパニック・ボタンが置いてあって、それを押すとこのSD(sensory depriviation)実験から解放してくれることになっていた。また部屋の外には1名の立会人がついていることになっていた。

この実験によって、いわゆる拘禁反応を見ようというものである。

被験者の心理的な特徴は、思考が混乱するだけではなく、ふつうはある特定の思考を維持することさえできなくなること。更に白昼夢がたえまなくひき続きおこるということである。
他人と接触しない時間が長くなると精神の集中力が低下し、まとまった思考ができなくなる。これは3日間の実験なので、被験者は思考過程に障害が生じたという自覚があるが、長期間にわたるとその自覚さえも怪しくなるかもしれない。

また白昼夢は絶え間なく起こるというのは、意識レベルが低下するということであり、個人の意識はここで無意識の中に沈潜する。既に世界の裂け目の中にはまり込んでいる。

捕虜収容所や刑務所、精神病院などでも、このような環境下におかれた人間は類似の心的反応を示すのだろうから、そのことは昔から経験的に知られていたのだろう。

さて暗室で無音という設定を除けば、社会性を失ってかつ自分の意志で室外に出れるという点で、この環境はひきこもりに近い。むしろ暗室と無音という設定により、ひきこもりで起こる心理の特徴を端的に浮かび上がらせている可能性が高い。

日本のひきこもりは今や100万人と言われる。彼らがこうした環境下にいることは、日本全体の心的ロゴスの状態を想像すると、100万人がまとまった思考を持てずに、白昼夢的な世界に過ごしていて、おそらくそのほとんどは小悪な、小地獄な混乱した世界観に暮らしているわけだから、日本の明るい未来など展望するどころではない状態であるように思う。

かつてソルジェニーツィンはソ連の物理的収容所をして『収容所群島』を描いたが、日本でもひきこもり百万人ともなれば、鉄格子なき収容所をかかえた列島とも見えるかもしれない。

『さて以上をまとめると、SDが思考作用におよぼす効果は多種多様である。少数のひとにとっては、思考はSDのあいだじゅうきわめて明断であり、ふつうの状況よりもいっそう良好でさえあった。

しかし大部分のひとにとっては、SDの状況は思考過程に障害を生じさせるように苛酷なまでに計算されたものであり、とくにSDを生産的な思考を行なえる期間であると期待し、考えるための問題をたくさんかかえて実験にやってきた被験者にとってはとくにそうだつた。

最初この種の被験者は非常によく考え、深く鋭い洞察力を発揮したが、この時期は長くは続かず、ふつうは二日目までに、はげしい変化が起るのに気づいている。すなわち、思考が混乱するだけではなく、ふつうはある特定の思考を維持することさえできなくなるので、この点で被験者は、恐慌ボタンを押してSDから解放されるか、あるいは白昼夢がたえまなくひき続きおこるのに身をまかせて実験を最後までやるかの、どちらかを選んだのである。

精神の集中力を失ったのは被験者の約三分の二であったが、ふつう彼らはこのことを認めたがらなかった。彼らは、自分たちの失敗にたいする非難を他に転嫁するような言いわけを述べ、自分たちは考えることはできたのだが、その考えについて一緒に議論する人がだれもいないのに考えるのは無意味に思われたのだとしばしば主張した。また他の人たちは、自分たちの思考過程に紙と鉛筆がいかに大切であるかがはじめでわかったと語った。ある被験者は、大声で話すことが許されなかったために考えることができなかったのだと主張した。

すべての被験者は、もし誰か他の人が一緒にいたなら自分たちの思考過程はさらに活発になっていただろうと報告した。彼らのほとんどは、聞き手がいることが、考えることを正当化してくれるのだと感じた。自分の思考過程について自信を持ち、他人の保証をいささかも必要としないという人に出あうことはごくまれであった。

それでは、ほとんどの被験者が「聞き手」の必要性に重きを置いているのであるから、それを利用して彼らをだますことができただろうか。もし、マイクロフォンの導線の他端にはいつも聞き手がいると被験者に教えれば、彼らのすべてに比較的良好な思考を維持させることができたであろうか。このような計画はきっと成功したにちがいない。SDの被験者は、聞いてくれる人がいると信じることができれば、きっと満足しただろうと思う。

以上の所見は、われわれすべてにとって社会的な相互作用が重要であることを強調しているように思われる。大部分の被験者にとって、SDはおそらく人生における最初の長い非社会的な体験であった。このことが、SDの他の諸条件と相俟って、被験者があらゆる種類の生産的活動――――精神的なものであろうと他のものであろうと――――にたいする欲求を疑うにいたるような状況をつくり出したのである。

たしかに人間は、感覚遮断によってつくりだされるような高度な知的真空状態のなかでは、考えることはできまい。』
(暗室のなかの世界/J.A.ヴァーノン/みすず書房P94-95から引用)

【ザ・ジャンプ・アウト 089】

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