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Channel: アヴァンギャルド精神世界
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覚醒して世界が変わる−21

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◎キュブラーロスの切り口

万人にとって世界が変わる瞬間と言えば、死である。誰にもやってくるとはいえ、否応なく世界が変わってしまうことに、直面することには、恐怖を伴うものである。

何を中心に置いて暮らしているかはもちろん人によって違うが、日々営々と築き上げた財産、常に他人にどう思われるかを気にして作り上げた名声・信用、地位が上昇したことで勝ちえた権力、広汎でたよりになる多くの友人たち、平和で問題のない家庭、信頼の揺るぐことのない恋人関係あるいは夫婦関係、こうしたものがその一例。

死を目前にすると、こうしたものすべてを置いて別の世界に身一つで入っていかなければならないことに気づき愕然とするものだ。

エリザベス・キュブラー・ロスは、この死との出会いから受容までのステップについて5段階を立てた。
1. 否認と隔離・・・そんなことは信じられない
2. 怒り   ・・・なぜ私だけがそんなことに会わねばならないのだ。
3. 取引   ・・・神様もう財産(その他自分にとって大切なもの)はいりませんから命だけを与えてください。
4. 抑うつ  ・・・1から3までの努力が無駄だとわかった。他人からの癒しや、やさしいいたわりの効かない絶対的な悲しみに陥る
5. 受容   ・・・納得して受け入れる

悟りは、自我の死からの復活だから、まじめな修行者には、キュブラーロスの5段階みたいなことは起こる。5の受容まで行けば、密教でいう空性の悟り、プチ悟りみたいなものだろうと思う。キュブラーロスの5段階は、別世界そのものではなくて、別世界に入る精神的な準備。

それまでの自分をすべて捨てるということは、地位も名声も財産も家族関係もすべてを捨てるということであって、あの釈迦ですらそうしなければ修行は成功しなかった。捨てること自体は白でも黒でもないが、捨てないと次の世界に入れないのだ。


誰もが死を恐怖して、それから逃れようとするために権力を求めたり、財を求めたり、名声を求めたり、挙句は戦争を起こしたりする。その動機の最深部に流れているのは死への恐怖である。
そのことを科学的に論証するのは容易なことではない。しかし覚者たちは古来そのことを見抜いてきた。

さて、ここに「21世紀の人類社会」という名の人物がいたとする。彼が、別世界である「千年王国」に入るには、それまで築きあげてきたすべてを捨て去らねばならないということはあるだろう。

キュブラーロスの事績は、確かにチベット密教の死のプロセス体系から言えば、死の入り口を舐めただけである。しかし死の入り口こそ、別世界の入り口なのである。そしてその入り口のあることを、見て見ぬふりをし続けてきたのが、現代文明なのである。

世界の転換と言えば、いかにも大ごとだが、その入り口は誰にでも口を開けて待っている。そのことに直面すれば、何かが起きる。万人が死というものに直面せず逃げ回っているからこんな世界ができちまった。

従って、この絶望的な現代文明に対する的確な処方箋を書いた一人がキュブラーロスだったと今は思う。






悟りとは何か

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