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Channel: アヴァンギャルド精神世界
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故郷を持たぬものの故郷

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◎予感

時代は極まらないと、反転しない。反転し始めるというのは、既に反転のためのエネルギーがあふれ出て、誰にも止めることのできない状態になってしまっているということ。

戦争、核戦争が起こるというのも人間の神から遠く離れた行為が積り積り過ぎて、人間自らの手で急速に火と風で破壊しないとならないというモーメンタムが、戦争を発火させるところまで高まってしまっているということ。

前夜というのは、何も起きていないように見えるかもしれないが、耳を澄ましあらゆる音を聞き守れば、起きつつあることを感じ取ることができるかもしれない。


19世紀末頃のヘルマン・ヘッセの詩。
『サラサーテ

遠い翼にのって歌が飛んでゆく
そしてもうひとつ、最後の調べが
その後を追って流れ、高まり、逃げ去った―――
ああ、僕は泣きくずれてしまいたい
玩具をほしがって泣く子供のように

歓呼の声の高まりの中で
僕は未知の世界の息吹を
いつまでも心に味わっている
すでに子供の僕があこがれ求め
熱い腕に抱きしめたものを

それは別の世界から吹きくる息吹
夜ごとに燃えさかる熱い炎で
僕の熱っぽい目を呪縛するもの

故郷を持たぬものの故郷
太陽のように灼熱する芸術の国』
(ヘルマン・ヘッセ全集16 [全詩集]/ ヘルマン・ヘッセ/臨川書店P15から引用)

最後の調べが終わった空虚さとその感興の高まりは、彼を故郷を持たぬものの故郷の息吹にまで触れさせた。

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