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Channel: アヴァンギャルド精神世界
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親切な師家

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◎パワハラ・セクハラ・無理・理不尽・不条理

平林寺僧堂師家白水敬山は、美濃井深の正眼寺の小南惟精老師のところで15年修行。その臘八接心の時の記録。

『一月十六日

今夜から山上の新隠寮に休むからその用意をして置けとのことで、蒲団などを持ち運ぶ。昼一度、夜二度、新隠寮の風呂に入られる。入浴せられる時お湯加減を問う。

突然湯を衲(ころも)にブッかけて「世間の下男下女ではあるまいし修行底の者なれば、わしが湯に足を入れたその姿をみて湯加減を見てとれ」と叱られ、

白隠禅師が初めて正受老人(白隠禅師の師家道鏡慧端禅師)の所に行かれた時、風呂をわかせと命ぜられてわかされた。

正受老人は風呂に入ってすぐ栓を抜き、『今日までどんな修行をしてきたか知らぬが、風呂をわかすこともできぬ。わかし直せ』と叱咤せられたので、白隠禅師はまた山の下から水を汲み上げてわかし直された。

「わしはお前に湯をブッかけたが、栓は抜かぬぞ」と垂誡される。』
(講座禅 第5巻/西谷啓治/禅と文化 筑摩書房P316から引用)

臘八接心は、通常は12月なのだが、ここでは寒さ厳しい1月に8日間不眠で坐禅する。

この老師は、湯も抜かなかったので親切だと言っている。正受老人とこの老師とどちらが親切なのか。

ここは修行場であり、俗世間ではない。

恐怖の恵み。

終戦後、応召から戻ってきた人を禅寺で受け入れる時に、『戦地に比べれば、ここの修行は生ぬるいでしょうが、云々』などという前置きを目にすることがある。

現代は、全く戦場ではないが、ここまで個人の持つ価値観が揺るがされ、何が正しいか判別のつかない人が増えてくると、『もう沢山だ。もういい加減にしてくれ。』と、パワハラ・セクハラ・無理・理不尽・不条理な仕打ちに対して、反射的にリアクションして、それを引きずるのが当たり前みたいになっている。

よって現代人には、この白水敬山のような修行はもう成立しないのかもしれない。

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