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Channel: アヴァンギャルド精神世界
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ハイチのゾンビ-1

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◎連れ出された死人の霊魂は、壺の中に封じ込まれる

ゾンビと言えば、映画バイオハザード・シリーズのヒットで今や知らぬ者とてないが、ゾンビの起源はカリブの小国ハイチである。

『よみがえった死体

ソンビの目撃例は今世紀に入ってからも絶えないし、大勢のハイチ人がソンビを恐れている。ハイチに長く滞在すれば必ずゾンビの話を聞く。民衆の多くがそれを信じている。伝え聞くところによると、ソンビはつぎのようにして誕生するという。

ヴードゥーの司祭にはウンガンとマンボの他に、ボコ(bokor,boko)と呼ばれるものがいる。ボコはクライアントの依頼により金銭で他人を貶めることを生業としている。このボコがゾンビづくりの魔術を執り行うのだという。 ウンガンの中にはポコを兼ねている者も多く、彼らは「両の手で仕える者」と呼ばれている。

まずボコはこれといった死体に目星をつけ、死体が腐り出す前に墓から掘り出す。そしてなんどもなんども死人の名前を呼ぶ。すると死体がむくりと起きあがる。ボコはさらに名前を呼び続ける。 死体は墓から這いだしきったところで両の手に縄を掛けられ、以後、ボコの使用人として、遠く離れた農園に売られていく。連れ出された死人の霊魂は、壺の中に封じ込まれる。ゾンビには魂がなく、したがってどんな仕打ちにも文句一ついわない。かれは未来永劫、奴隷として働き続ける。

終わりのない奴隷生活は奴隷の子孫たちにとってこの上ない恐怖である。たくさんの家族が死体が目を覚まさないようにと策を立てる。

埋葬後三六時間を過ぎると死体は復活しないとされるので、ずっと見張っている家族があれば、死体に毒を注射したり、死体を切り裂く家族もある。死者の右手に刃物を握らせ、ボコが起こしにきたら一刺し出来るようにしているケースまであるという。』
(ヴードゥー大全/檀原照和/夏目書房P58から引用)

死体が再度働き出す話は、ハイチだけでなく、チベットにもヨーロッパにもあるが、真偽のほどは不明。ただ「連れ出された死人の霊魂は、壺の中に封じ込まれる」という技術は、仏像などへの「魂入れ」という技術と同根なのだろうと思う。

こういう話が広汎に広がる社会というのは、社会全体に希望がなく、あの世とこの世の境目が近く感じられるような恵まれない日常生活があるのだろうということは想像できる。



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