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Channel: アヴァンギャルド精神世界
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目には見えぬ毘盧遮那仏を見せる

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◎奈良の大仏と水銀汚染

奈良の大仏は、745年に製作開始、752年に開眼供養された。大仏に費やされた黄金は1万4百両、水銀は5万8千6百両。これだけの水銀が必要だった理由は、大仏の表面の金メッキのため。すなわち水銀に金を溶かして表面に塗り付け、これを加熱して水銀を蒸発させれば、金メッキが出来上がる。

この時発生する水銀蒸気を作業員が吸い込んで、水銀中毒になった者が多数出たと考えられる。

そうした弊害も国威発揚のためにはなんのその。大仏完成に必要な量の黄金が東北から調達できる見込みが立った時、大伴家持は、

天皇(すめらぎ)の 御代栄えむと 東(あづま)なる
みちのく山に くがね花咲く

とその喜びを詠んだ。

水銀公害は、港湾や河川への水銀放出でもたらされるというのが、昨今の流れだが、内陸でこういうことをやると、後始末は更に容易ではあるまい。大仏完成後まもなくの遷都の原因と目されても仕方ない。国力を挙げて作った大仏を都から去るということだからである。

大廈高楼を建てたり、大きな神像仏像を立てたりするのは、衆人の目を引くものだが、古代中世ならば、その意義は大きかったかもしれないが、今や自分の内にそれを発見する方が主流の時代となった。目には見えぬ毘盧遮那仏を見せてきた東大寺と、幔幕の内にはなにも見えぬ伊勢神宮内宮。日本にはどちらも揃って居る。

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