◎落雷で悟る
江戸時代、1千石の旗本の家に生まれた律女は、父がさる事情で浪人となり一家が京都に移住して落魄した。やがて売られて、島原の遊女となり、大橋と名乗った。
美貌であり、才芸もあったからたちまち売れっ子になったものの、心中うつうつとして楽しまない日々が続いて、最後はうつ病になったらしい。
さる客人がこれを見とがめて彼女に坐禅冥想をすすめたところ、彼女は一生懸命に坐ることになった。
ある日、一日に20か所にも落ちるような激しい落雷があった。生来、雷の怖い大橋は、蚊帳を吊り夜具を被っていたが、気を取り直し、端座し深い冥想に入った。
すると目の前の庭に落雷し、それと同時に彼女は気を失った。気絶から覚めると、見るもの聞くものすべてが歓喜に満ちた世界となり、大悟した。
後に彼女は、わざわざ静岡の白隠を訪ねその悟境を確認してもらっている。
錠前の鍵を落とした音で悟ったり、小石が竹に当たった音で悟ったり、桃の花びらが春風に舞うのを見て悟ったりなど、その契機はいろいろだが、落雷も当然にあるだろう。
だからと言って小石を投げてみたり、鍵を放り投げる者はいない。
白隠に参じた政女は、冥想に入ることが深く、子供に食事の支度もせず、空腹に泣いていた子供を不憫に思った隣家の人が食事させたり、さらには冥想から出た政女が、自分の子を見て、お前はどこの子だったのかいのう、などと云ったなどと、一日に4,5時間は冥想に入り、かつ、その境地も相当に深かったことがうかがえる。このくらいに入って初めて落雷などのきっかけとなる。
江戸時代、1千石の旗本の家に生まれた律女は、父がさる事情で浪人となり一家が京都に移住して落魄した。やがて売られて、島原の遊女となり、大橋と名乗った。
美貌であり、才芸もあったからたちまち売れっ子になったものの、心中うつうつとして楽しまない日々が続いて、最後はうつ病になったらしい。
さる客人がこれを見とがめて彼女に坐禅冥想をすすめたところ、彼女は一生懸命に坐ることになった。
ある日、一日に20か所にも落ちるような激しい落雷があった。生来、雷の怖い大橋は、蚊帳を吊り夜具を被っていたが、気を取り直し、端座し深い冥想に入った。
すると目の前の庭に落雷し、それと同時に彼女は気を失った。気絶から覚めると、見るもの聞くものすべてが歓喜に満ちた世界となり、大悟した。
後に彼女は、わざわざ静岡の白隠を訪ねその悟境を確認してもらっている。
錠前の鍵を落とした音で悟ったり、小石が竹に当たった音で悟ったり、桃の花びらが春風に舞うのを見て悟ったりなど、その契機はいろいろだが、落雷も当然にあるだろう。
だからと言って小石を投げてみたり、鍵を放り投げる者はいない。
白隠に参じた政女は、冥想に入ることが深く、子供に食事の支度もせず、空腹に泣いていた子供を不憫に思った隣家の人が食事させたり、さらには冥想から出た政女が、自分の子を見て、お前はどこの子だったのかいのう、などと云ったなどと、一日に4,5時間は冥想に入り、かつ、その境地も相当に深かったことがうかがえる。このくらいに入って初めて落雷などのきっかけとなる。