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Channel: アヴァンギャルド精神世界
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負局先生

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◎紫丸赤薬

負局先生は、どの地方出身の先生かはっきりしないが、そのなまりから燕代地方の人らしい。

彼は鏡を磨くことをもって生業としていたが、お客さんが来ると、必ず家に病気で苦しんでいる人がいないかと尋ね、もし病人でもある場合には、懐中から紫丸赤薬を取り出して、これを飲ませるとどんな病気でも直ちに癒らないということはなかった。

ある年、悪疫大いに流行して人々が非常に難儀をした時、彼は家毎にこの薬を分かち与えて、これによって病苦を免れた者は幾万という数を知らず、しかも負局先生は一文も謝礼をとらなかった。

その後、彼は久しく呉山に隠れていたが、その家のそばにある崖の上に薬を懸けて置き、人民が勝手に来て持って行かせるようにしていた。

これについて彼は、自分はまもなく蓬莱山に帰ろうとするのだから、こうやってあなた方人々のために、川の崖のほとりに神を降し留めて置くのであると言っていた。

ところが、雨が降るたびに、水が増し、薬が溶けて下流に押し流されるため、その下流の水を汲んで飲む人はどんな病気でも忽ちに平癒しない者はなかった。

そこでその地方の人々は、彼のために祠を建て、年々盛んな祭りを行っていた。

現代なら薬事法違反、医師法違反。病気を癒すために金銭が必要だったのは昔も今も変わらない。
だが、超能力的な効能ある薬を只で配布し、殊更に川に流してみせるということは、輪廻転生の終わりに近い人物、あるいは人間というものを卒業しかけている人物しか為し得ないと思う。
ダンテス・ダイジは、道を伝えるに一切謝礼を受け取らなかった。
いつまでもメリットや金ではあるまい。

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