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Channel: アヴァンギャルド精神世界
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預言者郷里に容れられず

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◎すべてを捨て去った後

「預言者郷里に容れられず」とは、聖書ルカ伝にある言葉で、イエスが「はっきり言っておく。預言者は、自分の故郷では歓迎されないものだ」と語ったのが出典。

同じような話が、多くの有力弟子を輩出した唐代の禅者馬祖についてもある。
馬祖は、709年四川省成都にほど近い漢州の生まれ。

馬祖が南嶽懐譲の下で大悟して、後に故郷の蜀の国に帰った。村人たちはそれを聞きつけてどこからともなく集まって、わいわいがやがやと歓迎してくれた。沢のほとりの婆さんが「なんだ。箕(み)(ざるみたいなもの)造りの家の子せがれではないか。」と。

馬祖はたまらず、「皆さんに故郷には帰らないことを勧めます。故郷に帰っては仏道は成就するものではありません。沢のほとりの婆さんが私を昔の名前で呼ぶのですから。」と言って、江西に戻って行った。

イエスも大工の子せがれであり、馬祖も箕(み)造りの家の息子。それ以上の社会的評価以上のものがない故郷では、精神性を評価されることはない。

何より彼らの修行プロセスでは、故郷での名やそれまでやってきたことも含め、社会性も地位も名誉も世俗の願望も、すべてを捨て去った時期があっての神との出会いであり、仏道の成就であったからである。帰郷は面白いものであるはずがない。



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