三毒 心を曇らせるもの
◎人の頭には穴が空いている 仏教で三毒というのは、貪(むさぼる、欲深)、 瞋(怒り)、癡(迷妄、迷い、疑い)。 これを積善陰徳の功過格風に読むと本筋ではないのだろう。 スワミ・ラーマ(スワミジ)は、以下のように語っているが、これは三毒のことを言っている。 『「神の恩寵はつねにそそいでいるが、一般にいって、人の頭には穴が空いている」スワミジは言った。...
View Article顔真卿
◎刀圭碧霞の仙丹 顔真卿は、唐末の書家にして、忠臣の鑑。 開元年間に進士に挙げられ、その後監察御史となった。 徳宗皇帝の時、大梁の李希烈が反乱を起こした。顔真卿は、皇帝の命により問罪の死者として李希烈の下に行くことになったが、知人たちがこの役目は生きて還ることが難しいことを察して、長安の東の長楽坡にて送別の宴を開いた。...
View Article喪服の白から黒への転換
◎おざなりな明治政府の施策 韓流ドラマや中国ドラマを見ると葬礼シーンでは、全員が白を着用しているのを見て、おやおや日本文化は中国、朝鮮伝来ではないのかいと違和感を感じることがある。 明治政府は、天皇家の宗教も仏教から神道へ廃仏毀釈などの流れで半ば強制的に変更させたのだが、皇族の葬礼についてももともと決まりは持っていなかった。...
View Articleマニ教
◎文明のピークから衰退への切り替わりの早さ 円仁は、空海が長安にあって恵果から密教の奥義を伝授され大量の経典を日本持ち帰るという大きな成果を挙げたわずか20年ほど後に中国に入ったが、実のところ空海ほどの成果は上げられず、道教優先、廃仏の機運が高まる中、不安な日々を過ごしている。...
View Article人を偏見なく見る
◎精神の高みを見る 学歴もなく教養もなく金もないが、悟っている人はいるものだ。例えば浄土真宗に妙好人として南無阿弥陀仏の連唱だけで覚醒した市井のそうした人がいることは知られている。 いまでもそのようにお題目教団や念仏教団のまじめな平信者のおばさんの中にそうした人はいるし、カルト教団の平信者の中にすらもそういう人がいないとも限らない。...
View Article死の前夜に魂の如きものが飛ぶ
◎討ち死に前夜 文禄年間の随筆義残後覚の巻三に出ている奇譚。 北國の人の話では,越中の大津の城を佐々内蔵助が攻略している時のこと。 攻撃側の人数があまりにも多く、城中では弱り果てて、このままでは明日にも討ち死にしようとお互いに別れの挨拶を言い交し始めたところ、女子供が悲しむこと限りなく、まことに哀れな状況であった。...
View Article生と死のコントロール手法群
◎死に方というのは極めてデリケートなもの 肉体は、人間が覚醒するために必要な道具であるが、肉体は物質である以上は経年劣化し、覚醒するためには利用できない代物になった時に死が起こる。 これは、生も死もコントロールできるようになった修行者たちのもの言いである。死に際して孤独とすべてを喪失する恐怖におののく死を前にした人々のための言い方ではない。...
View Article90歳のブーレ・ババの肉体乗り換え
◎長時間サマディーにとどまる道具 ブーレ・ババのブーレは老いたという意味。アッサムの、90歳になろうとするブーレ・ババは、この肉体は長時間サマディーにとどまる道具にはならないとして、かねて若い肉体の出物を待っていた。 ある日彼は、明日50キロ離れたところで若い男が蛇にかまれて死に川に流されるのだが、それは良い死体だと語った。...
View Article肉体乗り換えとモクシャ
◎一生を冥想修行に充ててきた人のための技法 仏教では、転生しないことをカルマからの解脱とし、インドの究極では、モクシャのみがあり、人はいない。 平たく言えば転生しないことが、終局である。だが悟りはインドでは人間がいないところを大団円とするが、中国、日本では悟りから戻って人間をこなすところをフィナーレに持ってきている。...
View Article乗り物としての肉体
◎孤独な鳥 現代社会では、人間は肉体と不可分の意識であって、それに権利と義務が付随するというやや面倒なことになっている。 だが、人間は稼いでためた金を一円たりともあの世に持っていくことはできず、無神論的世界観では、人間は死によって何も残らず消滅するなどと考えたりもする。...
View Articleスワミ・ラーマの悪童ぶり
◎後に後悔とともに思い起こす スワミ・ラーマは、大聖ババジの秘蔵っ子であるが、若い時の悪童ぶりはひどいものだった。 若くて未悟であって、社会経験が少ないと、少々小生意気な議論を、恐れ多いことだが、覚者に対しても青い議論を吹っ掛けることすらある。 スワミ・ラーマもそうした嘴の黄色い一人であって、何度も先輩覚者を怒らせている。...
View Article好きと嫌い 私欲と無私
◎えり好みの陥穽 好きと嫌いの間の壁は薄い。同様に私欲と無私の境目の壁は薄い。 ほとんどの子供は、利己的な性質を持って育ち始めるが、幼稚園や学校で利己的なところを隠して協調的に他人と暮らすことを学ぶ。 それは、日本では、挨拶や礼儀というものに象徴されるが、それは本質的な無私を体したものでなく、表面的な無私にすぎないことがほとんどである。...
View Article明智光秀の妻が髪を切る
◎髪と指 毛髪には呪力があり、禰宜は髪長であり、髪を伸ばす。仏僧は、剃髪して髪を切る。 インドでも中国でも日本でも古来長い髪は商品として販売することができた。だが単なる商品価値ではなく、髪を切る方には、神仏の加護が薄くなったり、外見が女らしくなくなるという女性としては致命的な問題も派生する。 明智光秀が元旦に朝倉家を立ち退き、柳が瀬の知人方に逗留していたが、ある日連歌の会を催すことになった。...
View Article夏目漱石の神経症から
◎現代的ライフ・スタイルの蟻地獄 夏目漱石はロンドンに留学して、神経症(ノイローゼ)になった。下宿先の大家に、真っ暗な室内で泣いている姿を目撃されたり、勉強する意味を見失い、「何も書くべきことがない」として、文部省への報告書を白紙で提出したりした。 私欲、エゴは神経症の原因である。神経症の根源には他人からの注目、他人からの関心への強い渇望がある。...
View Article小人をして天下を治めしむれば
◎国家混乱すれば天災地妖到る この夏から秋にかけては、西日本の大水害、超大型台風の来襲による関西国際空港水没と関西の風水害、北海道胆振東部地震と天災が相次いだ。 台風、ハリケーンということでは、今まさにノースカロライナのハリケーン「フローレンス」とフィリピン、広東を襲った台風22号が被害を出している。...
View Articleニュースを知らない人々
◎ネオ情断な人間 最近、時事で起こっているトップ・ニュースすら知らない人に時々出くわす。 最初は、特殊な例であり、そんな人はまれにしかいないのだろうと思っていたが、時々出会うことから、実は相当にいるのではないかと想像している。...
View Article昭和天皇の伊勢神宮参拝
◎伊勢神宮の公開 明治天皇は、生涯に4度伊勢神宮参拝などと言われているが、昭和天皇も節目節目に伊勢神宮を参拝されている。 昭和十五年(一九四〇年)六月、昭和天皇は伊勢神宮を参拝、この年は「紀元二千六百年」。 昭和十七年十二月、昭和天皇は戦勝祈願のため伊勢神宮を参拝。随行した総理大臣東条英機は、この天皇の姿を目にし感涙にむせんだという。...
View Article時はしぼみおとろえる
◎滅びざる焔 W・B・イェイツの1899年の詩から 『情調 時はしぼみおとろえる 燃えつきたろうそくのよう 山々にだって森にだって 終わりがある終わりが来る だが焔から生まれた情調には ひとつとして滅び去った ものがはたしであったろうか』 (W・B・イェイツ全詩集 北星堂書店P31から引用)...
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